事例・奈良
奈良の送迎ボランティアが、出られない電話をAIエージェントに任せた話。
この送迎は、通訳者がいたから動きました。片側には、電話で送迎を頼む高齢の方と、運転するボランティア。もう片側には、Claude Codeで作ったAIエージェント。その間に、両方に話せる通訳者がいました。
Claudeの役割:私たちはClaude Codeで作っています。本番の電話の会話は、OpenAI のリアルタイム音声モデルが担っています。
- 助ける相手
- 奈良市鶴舞地区で、病院や店への送迎を電話で頼む高齢の方。
- 困りごと
- 予約はほとんど電話で、ひとりでは全部の電話に出られなかった。
- 作ったもの
- 予約の仕組みと、予約を受ける電話のエージェント。
- 誰が決めるか
- はっきりした予約は、エージェントが自分で入れる。まず人が出て、足りない時は、折り返すようチームに知らせる。
- いまの状態
- 2026年10月4日から本番。いまも、まず人が電話に出る。
- まだ測っていないこと
- 担当者の手間がどれだけ減ったか。
1・困りごと
予約は、ほとんど電話で入る。
奈良市の鶴舞地区では、地域の自治協議会が送迎ボランティアを運営しています。月・水・金に、高齢の方を病院や店へ送ります。料金は片道100円です。
ご近所が自分たちで始めました。中心になったのは自治協議会の会長です。
始まりは2025年3月の実証実験です。地域のアンケートで、答えた106世帯のうち52%が「利用する」と答えました。
予約は、ほとんどが電話です。1日に10件以上の日もあります。Webのフォームは、高齢の方には広まりませんでした。
私たちも運転手として走り、予約の仕組みを作っています。ひとりで全部の電話に出るのは、限界でした。
2・作ったもの
聞くのはエージェント。責任を持つのは人。
まず、予約フォーム。最初の予約フォームは Google Apps Script で動き、予約はスプレッドシートに集めました。はじめはAIが書いたコードを貼り付けて作り、そのあと初期のClaude Codeで作り込みました。
そのあと、Cloudflareの予約システム。予約を1つのデータベースにまとめました。運転手は、1分ごとに更新される予定表と地図を見られ、お迎えの前に通知が届きます。公開の確認ページには、日付・時刻・件数だけを出し、名前は出しません。
電話受付のエージェント。まず人が電話に出て、人が出られない電話をエージェントが受けます。予約に要るのは、お名前・日にち・時刻・行き先の4つです。お迎えの場所とご用件もうかがいます。お名前は、登録している利用者の一覧と照らし合わせます。相手が話し始めたら黙って聞きます。最後に予約を復唱し、お客さまが同意したら予約を入れる作りです。先に承認する人はいません。足りないことがあれば予約は入れず、折り返すとお伝えして、チームに知らせます。お名前が一覧と合わない時は、予約は入れて、人が確かめる印を付けます。出る時に、AIだとは名乗りません。
予約の確認係(開発中)。通話の記録から予約の下書きを作る、もう一つの道具です。重なり、空いている時間枠、名前、住所を確かめ、担当者の承認を待ちます。
入れ替えられる部品。最初は外部の音声サービスで始めました。2026年5月に、手元のMacの自前の部品へ移りました。2026年10月からは、本番の電話の会話を OpenAI のリアルタイム音声モデルが担い、手で切り替えられる予備として、Gemini Live も組み込んでいます。会話を担うモデルは替えられます。
通話のデータの行き先。お客さまの声は、OpenAI のリアルタイム音声モデルに送られます。通話のあと、会話の文字が OpenAI の別のモデルに送られ、予約の中身を取り出します。通話の記録は送迎の予約システムに入ります。チームへの報告は通話ごとに Telegram に届き、折り返しが要る電話は Mattermost にも知らせます。会話の文字と、エージェント側の声の録音は、受付のMacに残ります。
Claudeの役割。私たちは、初期のころからClaude Codeで作ってきました。いまClaude Codeは、電話の仕組みを作る常駐の開発者として、エージェントの台帳に登録されています。予約システムの手入れも、Claudeが手伝っています。ほかのエージェントは別のモデルで動き、本番の電話の会話は OpenAI のリアルタイム音声モデルが担っています。それが大事な点です。1社に鍵を預けません。
3・結果
ここまでの数字。
- 1,337件送迎の予約(2025年3月3日〜2026年8月28日)予約データベース・取消を除く
- 28→1431か月の予約件数(最初の月 → いちばん多い月)2025年3月 → 2026年7月
この数は、送迎がどれだけ使われているかを示す数字です。自治協議会と、運転手のボランティアと、担当者が積み上げたもので、AIで何が変わったかを示す数字ではありません。
- 2026年5月の電話AIの構成は月に約1,550円でした。内訳は電話番号代550円と、電気代約1,000円です。AIの部品はすべてオープンソースで、手元のMacで動いていました。外部の音声サービスでは月に約21,500円でした。いまの本番の電話はクラウドの音声モデルを使うので、その費用はこの額に入っていません。
- 2026年9月12日、実地の試験で、エージェントが本物の電話を受け、予約を自動で登録しました。試験の登録なので、あとで消しています。通話は127秒、費用は約16円でした。
- 2026年9月下旬の時点では、まだ試験の段階でした。まず人が電話に出て、人が出られない時だけエージェントが受けていました。
- 2026年10月4日から本番です。いまも、まず人が電話に出て、人が出られない電話をエージェントが受けます。
- まだ公開していないこと:本番でエージェントが自分で入れた予約の数。まだ測っていないこと:担当者の手間がどれだけ減ったか。確かめた数字が出たら公開します。
4・関わる人
支えている人たち。
- 運営は自治協議会です。運転はボランティアが担い、私たちも走っています。
- 通訳者は、肩書きではなく役割です。利用者の困りごとが分かり、エージェントにも指示を出せる人。困りごとを指示に訳し、結果を助けに訳して返します。
- 元フロントエンドエンジニアのメンバーは、長く家で過ごしたあと、いまはClaudeで電話受付と予約の仕組みを作っています。
- 19歳の双子のメンバーが、送迎の現場で高齢の方を支えています。
- 2026年7月、奈良市長に実績を報告し、3つの課題を伝えました。電話受付の負担、法人格がないこと、費用です。次の一歩について助言を受けました。
- 送迎の側でも、NPO法人になる準備を進めています。契約や助成金を、自分たちの名前で受けられるようにするためです。
5・学んだこと
守っている3つの決まり。
- 全部を復唱する。推測しない。お客さまが確かめたことだけを予約にする。
- 人がそばにいる。まず人が出る。エージェントが受けた電話は、すべて人に報告する。
- 部品は、すべて入れ替えられるように。送迎は、どの会社よりも長く続かなければなりません。
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